瞑想時間が1,000時間を超える人達と、実験直前の1週間瞑想をした人達の安静時脳活動を比較した研究をご紹介します。
安静時脳活動とは、何もせずぼーっとしている時の脳活動のことで、そのようなぼんやりした状態の時、脳内では複数の領域が同期して動いていることが知られています。この安静時にみられる脳領域間の同期は安静時の機能的結合 (rsting state functional conectivety)と呼ばれ、複数の脳領域がネットワークを組んで特定の精神作用を実現していると考えられています。安静時のネットワークの中でも、中核に位置しているのがデフォルトモードネットワーク (default mode network)で、英語の頭文字をとってDMNと呼ばれます。
この研究ではDMNをターゲットに、長時間の瞑想者と始めたばかりの人の違いが検討されました。
その結果、長時間瞑想者では瞑想初心者に比べて、下の図の点線で示された領域間の結合が弱く、反対に実線で示された領域間の結合は強いことが示されました。

DMPFC: 背側中前頭前皮質
VMPFC: 腹側中前頭前皮質
ITC: 下側頭皮質
IPL: 下頭頂葉
長時間瞑想者で結合が弱まっていたのは、self referential processingと言って、自己に関連する情報処理、つまり自分のことを考えている状態に関する領域です。反対に、長時間瞑想者で結合が強かったのは、present moment awareressと言って、今この瞬間に起きていることへの気づきに関する領域です。
これらの結果は、瞑想によるトレーニングが、DMNの機能的結合に変化を与え、一瞬一瞬の経験への気付きが強まることを示唆しています。また、この結果は、以前にマインドフルネスと自己でご紹介下研究結果と同じ方向を指し示しています。