禅僧、人類学者で、「コンパッション:状況に飲み込まれずに必要な変容を導く共にいる力」の著者Joan Halifaxが創始したGRACEプログラムに参加中です(1日目が終了しました)。
このプログラムは、主に医療従事者、教育者、心理士、ソーシャルワーカー、介護士など、いわゆる対人援助職に従事する人の多くが共感性疲労によってバーンアウトしてしまうケースが散見される現状に対して、コンパッション(慈悲/慈愛)の力を養うことによって支援者自身のウェルビーイングを守りながら真の支援を可能にするためのものです。
online開催の第1回目だったようですが、世界中から500人を超える人たちが参加していて、今日の世界にいかにコンパッションが必要とされているかがよく分かります。そして、実際にJoanが自分のパソコン画面に出てきた時には、ちょっとミーハーに感動してしまいました。
1日目を終えて思ったのは、非常にシンプルで非常に深いということです。
GRACEは、以下のように、それぞれコンパッションをベースにした真の支援の構成要素の頭文字を表しています。
G: Gather attention 注意を今ここに集める
R: Recall intention 意思(自分がなぜここにいるのか)を想起する
A: Attune to self/other 自分にフォーカスし、相手にフォーカスする
C: Consider what will serve 何をするか(何ができるか)考える
E: Engage and end 従事して終わる
1日目のセッションでは、G, R, Aまで学びましたが、一番印象に残ったのは、Aのセッションで、Joanが言っていたこの言葉でした。
“Inhale, drop into your body“
(息を吸いながら自分の体に立ち寄る)
私たちは日常の中で体の感覚をあまり意識していません。drop intoは、立ち寄るという意味がありますが、私はこの言葉を聞いて体に立ち帰るといってもいいのではないかと思いました。心にとって身体は、いわば家のような存在ですが、私たちの心はなぜが家に留まっておくのが苦手で、いつも外側に答えを求めて忙しくしています。
そして心が忙しくあれやこれや考えていると、頭の中で考えた枠組みを通して相手を見てしまうので、目の前にいる相手への純粋な理解を妨げとなってしまいます。つまり、本当のその人ではなく、過去の自分の経験から作り上げた予測を通して相手を見てしまうので、本当にその人が必要としていることを見誤ってしまう可能性が高くなります。これは、以前書いた脳の予測システムの話に通じます。
そこで、無意識に作り上げた予測に縛られないために意図的に身体に立ち帰るわけです。とても理にかなっていて、かつ実践的な方法だと感じました。カウンセリング中にも是非実践していきたいです。