マインドフルネス研究は、参加者を2群に分けて、1ヶ月〜2ヶ月の一定期間、瞑想を集中的にやる群と、やらない群で実験結果を比較するタイプの研究と、瞑想は行わず実験直前にマインドフルな感情との関わり方を教示し、参加者が理解したことを確認して実験を行い、マインドフルな感情との関わり方を学んだ群と何もしなかった群で、実験結果を比較するタイプの研究があります。
今日は、実験直前にマインドフルネスの教示を行なっただけの研究(Lutz et al., 2014)の一部をご紹介します。
この研究では、20歳〜57歳の女性参加者をマインドフルネスの教示を行なう群(マインドフルネス群)と、行わない群(ベーシック群)に分け、マインドフルネス群には、非評価的に今この瞬間に気づくこと、全ての経験に対して心を開いておくこと、どんな考えが頭に浮かんだか、どんなことを感じているか、身体にはどんな感覚があるかということに気づきを向けることなどが教示されました。
その後、MRIスキャナーの中でポジティブ、ネガティブ、ニュートラルな写真をランダムに見てもらう課題を行いました。またこの課題では、写真が出てくる前にその写真がポジティブか(∪)、ネガティブか(∩)、ニュートラルか(ー)、何が出てくるかわからないか(|)を知らせる予測のフェイズが設けられています。
その結果、ベージックグ群と比べてマインドフルネス群でネガティブな写真を見ている時の扁桃体の活動が統計的に有意に低いことが示されました。

Bas: ベージック群
ng: ネガティブな写真を見ている時
nt: ニュートラルな写真を見ている時
また、予測フェーズでは、ベージックグ群と比べてマインドフルネス群でネガティブな写真を予測している時のDMPFC (背内側前頭前野)の活動が有意に高いことが示されました。

Bas: ベージック群
eng: ネガティブな写真を予測している時
ent: ニュートラルな写真を予測している時
扁桃体は、不安や恐怖などの感情処理に、DMPFCは感情のトップダウン調節に関連することが知られていますので、これら結果は、感情刺激に対するマインドフルな関わり方を短い時間で簡単に学ぶだけでも、ネガティブな刺激に対する脳活動が変化し、不安や恐怖などの感情の覚醒度(arousal; その感情の強さ)を下げることを示唆しています。
私のカウンセリングの中でも、ネガティブな感情はあって良いし、それを感じるのは悪いことではない、憎しみや妬みや、不安、怒りを感じた自分を責めなくて良いことをよくお伝えします。そうすると、それが知れただけで楽になったというような感想を頂くことがあります。これは、マインドフルネスの全ての経験に対して心を開いておくことに通じます。
この研究の教示に使われたような、非評価的に今この瞬間に気づくこと、全ての経験に対して心を開いておくこと、どんな考えが頭に浮かんだか、どんなことを感じているか、身体にはどんな感覚があるかということに気づきを向けることを、是非日常の中に取り入れてみてください。
