長期間の瞑想実践者の脳

瞑想熟練者と瞑想初心者の脳活動を比較した研究をご紹介します。

背景

長期間の瞑想実践が脳に与える影響はまだ十分には知られていない。先行研究から、注意、ワーキングメモリー、学習などで、神経放電の同期が総合的な役割を担っていることが示されている。また、神経放電の同期は、分散した個々の神経活動を高度に秩序化された認知機能に統合するためのネットワーク形成において重要な役割を果たすと考えられている。

目的

瞑想中の脳活動を長期瞑想者と短期瞑想者で比較する。

方法

<研究対象者>
長期瞑想者:10,000〜50,000時間(15〜40年)の瞑想実績を持つ仏教徒8名
短期瞑想者:1日1時間の慈悲瞑想を1週間続けた10名の大学生

<瞑想>
慈悲の瞑想(特定の対象にフォーカスしない)

<脳活動計測>
脳波

結果

長期瞑想者の脳波において瞑想中に持続的な高振幅ガンマバンドと位相同期が示された。このパーターンは特に外側の前頭頭頂領域で認められた。
長期瞑想者1名のデータを例示
a: 脳波のローデータ、b: ガンマ波のタイムコース、c: 大脳半球間の同期のタイムコース
色は実験中の瞑想のタイミングを示す(青:1回目、赤:2回目、緑:3回目、黒:4回目)

また、内側前頭頭頂領域におけるガンマバンド(25〜42 Hz)と低速振動(4〜13 Hz)の比率は、瞑想前の安静時でも長期瞑想者が高い値を示した。

IB: 実験開始直後の安静時、OB:各瞑想ブロックの間に設けられた安静時、MS:瞑想中
ガンマバンドと低速振動の比率は実験開始直後の安静時で既に有意差があり、 その後さらに差が大きくなっていく。

考察

瞑想というメンタルトレーニングは一時的に神経活動を統合するような神経活動を必要とし、短期、長期の神経活動の変化を誘発することを示唆。

出典:Long-term meditators self-induce high-amplitude gamma synchrony during mental practice