前回は、私たちが考え事に夢中になっている時、感覚情報の知覚がおろそかになってしまう知覚分離 (perceptual decupling)について説明しました。この知覚分離は私たちの生活の中で起きる様々な現象を見事に説明してくれます。
例えば考え事をしていて
✔︎ 誰かに呼ばれていることに気づかない
✔︎ 本の内容が頭に入らない
✔︎ シャンプーの後コンディショナーをつけたかどうか分からない
✔︎ 車にひかれそうになる
✔︎ 会議中、議論の方向性を見失う
✔︎ 会議中、何を質問されているのか分からない
✔︎ さっき入れたコーヒーが気づけば空になっている
✔︎ 食事したけど食べた気がしない
✔︎ デート中、話を聞いていないと相手から怒られる
✔︎ 電車を乗り過ごす
✔︎ 電車の女性専用車両に乗ったまま気づかない(男性の場合)
これらは考え事をしている時、私たちは聞いているようで聞こえていない、見ているようで見えていない、食べているようで味わえていないことを表しています。
では、私たちはどれくらい目の前のことと関係のないことを考えているのでしょうか?世界83カ国、18歳〜88歳、86職種の15,000人以上の人を対象に行われた大規模な研究では、起きている間に行われる思考の46.9%は目の前のことと関係のない思考だったことが示されています。興味深いのは、目の前のことと関係がないことを考えている時と、目の前のことに集中している時の幸福度を比べてみると、たとえその時の活動が全く楽しめないことであっても、目の前のことに集中している時の方が幸福度が高かったことです (A Wandering Mind Is an unhappy mind)。この研究は、TEDでも紹介されていますのでご覧ください(左下のアイコンから日本語字幕が選べます)。タイトルは、”Want to be happier? Stay in the moment”で、これを分かりやすく関西弁で言うと、「もっと幸せになりたいんやろ?ほなこの瞬間にとどまっとき」です。