考え事をしている時には、五感による情報処理が抑制されることを示唆する研究をご紹介します。
背景
多くの認知課題は感覚情報の処理を必要としない。注意が内側に向いているときは思考の邪魔になる知覚情報を無視したり抑制したりする必要がある。
目的
内的な注意の維持に関わる脳内メカニズムを特定すること
方法
32人の健常者を対象にfMRIを使って実験
課題:アナグラム課題(4つのアルファベットを入れ替えて違う言葉にする/例:POST → STOP)、文章生成課題(4つのアルファベットを使って文章を作る/例:POST → Oldies Sometinmes Provoke Tears)
条件:外向き(スクリーンの文字を見ながら課題を行う)、内向き(スクリーンの文字が数秒で消える。つまり頭の中だけで考えることになるので注意が内側に向かう)
結果
内向き条件で両側の舌状回、左楔部、右前下頭頂小葉の活動が上昇し、後頭葉と上頭頂皮質の活動が低下。
内向き条件で右の前下頭頂小葉と二次視覚野・視覚連合野を含む後頭葉との機能的結合が強まっていた。

考察
内向き条件で視覚野の活動が低下してたことと、内向き条件で右の下前頭頂小葉と視覚野の機能的結合が強まっていたことを総合して考えると、右の下前頭頂小葉が考え事をしている時の感覚情報処理の抑制に関わっていることが推察される。外からの感覚情報処理を抑制することは、目標志向的な認知処理にとって邪魔になる情報を排除する働きがあるのかも知れない。
→知覚分離仮説(Perceptual decoupling hypothesis)を支持
出典:Brain mechanisms associated with internally directed attention and self-generated thought